1.そもそも離職票とは?
離職票とは、正式には「雇用保険被保険者離職票」といい、離職した労働者が雇用保険の基本手当などの受給手続きをする際に使用する重要な書類です。
離職票には、離職票-1、離職票-2の2種類があります。
離職票-2には、離職日や退職前の賃金、離職理由などが記載されています。
失業給付の受給資格や給付日数、給付制限などを判断するうえで、離職理由は重要な意味を持ちます。
ただし、離職票に記載された内容が、そのまま最終的な判断になるわけではありません。
例えば、会社が「自己都合退職」として手続きをしたとしても、実際には会社から退職を求められた、退職勧奨を受けた、賃金が大幅に低下したなどの事情がある場合には、ハローワークにその事情を説明して判断を求めることができます。
厚生労働省も、離職理由が実際と異なる場合には、受給手続きの際にハローワークへ申し出て、離職理由を証明する資料を提出するよう案内しています。ハローワークは、本人の主張や証拠資料、事業主側の主張などを確認したうえで離職理由を判断します。
2.会社には離職票に関する手続きをする義務がある
会社には、退職者について雇用保険の資格喪失手続などを行う義務があります。
雇用保険法7条は、事業主に対して、雇用する労働者が雇用保険の被保険者でなくなったことについて必要な届出を行うことを求めています。
そして、雇用保険法施行規則7条では、事業主は、被保険者でなくなった事実があった日の翌日から起算して10日以内に、資格喪失届を所轄のハローワークに提出することとされています。
離職が原因である場合には、離職証明書などの書類も提出することになります。
厚生労働省も、離職した場合には、離職日の翌日から10日以内に、会社が資格喪失届および離職証明書をハローワークに提出するよう案内しています。
したがって、「会社が離職票を出したくないから出さない」という対応が当然に認められるわけではありません。
もっとも、正確には、会社が「離職票そのものを発行する」というより、
会社 → ハローワークに離職に関する届出・離職証明書を提出 → ハローワークが離職票を交付 → 本人に交付
という流れになります。
なお、2025年1月20日からは、一定の条件を満たす場合、ハローワークから離職者本人のマイナポータルへ離職票を直接送付する仕組みも始まっています。
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3.離職票は退職後いつ届く?
会社による雇用保険の離職手続きには期限があります。
原則として、会社は、離職日の翌日から起算して10日以内に、資格喪失届等をハローワークへ提出します。
例えば、3月31日が退職日であれば、4月1日から10日以内が会社による手続きの期限となります。
ただし、「退職後10日以内に必ず自宅に離職票が届く」という意味ではありません。会社がハローワークに書類を提出した後、ハローワークによる処理が行われ、その後に離職票が交付されるためです。
また、会社が電子申請を利用しているか、離職理由について確認が必要か、マイナポータルへの直接交付の対象となるかなどによっても、本人が受け取るまでの期間は異なります。
そのため、退職後一定期間が経過しても届かない場合には、「もう少し待てばよい」と考えるのではなく、会社に手続き状況を確認することが重要です。
厚生労働省は、離職票の交付を希望しているにもかかわらず、離職日の翌々日から10日を経過しても手元に届かない場合には、まず会社に処理状況を確認し、会社が手続きをしない場合や督促しても届かない場合には、住所を管轄するハローワークへ早めに相談するよう案内しています。
4.離職票が届かない場合、まず確認すること
離職票が届かないからといって、直ちに会社が手続きを怠っているとは限りません。まず、次の点を確認しましょう。
①会社に離職票の交付を希望しているか
会社に対して、明確に、「失業給付の受給手続きのため、離職票の交付を希望します」と伝えたか確認しましょう。
特に、退職時に「離職票は不要」と伝えていた場合には、会社が離職票の交付を希望していないものとして手続きをしている可能性があります。
2025年1月以降、会社が「離職票交付なし」の手続きを行うと、求職者給付のための離職票が発行されないため、基本手当を受給したい場合には、会社に「離職票交付あり」で手続きをするよう依頼する必要があります。
②会社がハローワークへの手続きを済ませたか
会社に、資格喪失届を提出したか、離職証明書を提出したか、ハローワークで手続きが完了しているか、離職票をいつ発送したかを確認しましょう。
単に「手続き中です」という回答ではなく、可能であれば具体的な処理状況を確認することが重要です。
③マイナポータルに届いていないか
2025年1月20日から、一定の条件を満たす場合には、離職票をマイナポータルで直接受け取ることができるようになりました。
主な条件として、マイナンバーが雇用保険の被保険者番号と適切に紐付いていること、離職者がマイナポータルと雇用保険WEBサービスの連携設定をしていること、会社が電子申請によって離職手続きを行うこと、などがあります。
そのため、会社から郵送されてこない場合でも、マイナポータルを確認する価値があります。
5.会社への問い合わせ・請求はどうする?
会社に問い合わせる場合、電話だけで済ませるのではなく、メールや書面など記録が残る方法で行うことをおすすめします。
例えば、次のような内容です。
「○月○日付で退職しましたが、現在まで離職票が届いておりません。失業給付の受給手続きに必要となりますので、雇用保険の資格喪失手続きおよび離職証明書の提出状況をご確認いただき、離職票の交付手続きを速やかにお願いいたします。手続き済みの場合には、提出日および離職票の交付・発送状況についてご回答ください。」
ここで重要なのは、単に「離職票を送ってください」とだけ伝えるのではなく、「ハローワークへの手続きが済んでいるのか」を確認することです。
離職票は会社が作成して勝手に発行する書類ではないため、会社側の手続きがどこまで進んでいるかを確認することが問題解決につながります。
6.会社が対応しないなら、ハローワークに相談する
会社に問い合わせても、手続きをしてくれない、何度催促しても対応しない、会社と連絡が取れない、会社が「離職票は出さない」と言っている、という場合には、住所を管轄するハローワークに相談することが重要です。
ハローワーク インターネットサービスでも、会社から離職票が交付されない場合や事業主が行方不明の場合などには、住居地を管轄するハローワークに問い合わせるよう案内されています。
厚生労働省も、会社が手続きをしない場合や、会社に督促しても離職票が届かない場合には、身元確認書類と退職したことが分かる書類を持参して、住居所を管轄するハローワークへ早めに相談するよう案内しています。
7.どこのハローワークに行けばよい?
会社の所在地を管轄するハローワークではなく、失業給付の受給手続きを行う「住居所を管轄するハローワーク」が基本となります。
一方、会社が行う雇用保険の資格喪失届等は、原則として事業所の所在地を管轄するハローワークに提出されます。また、会社に対して手続きを行うよう指導・督促してほしい場合は、事業所の所在地を管轄するハローワークとなります。
つまり、
会社側の手続き → 会社の所在地を管轄するハローワーク
自分の失業給付の受給手続き → 住居所を管轄するハローワーク
という違いがあります。どちらに相談すべきか分からない場合は、まず自分の住所を管轄するハローワークに相談するとよいでしょう。
8.離職票がなくても失業保険の手続きを始められる?
ここは非常に重要なポイントです。
「離職票が届かないから、失業給付の手続きもできない」と考えて、何週間も待ち続けるのは避けたほうがよいでしょう。
厚生労働省は、離職票が届かない場合には、住居所を管轄するハローワークへ早めに相談するよう案内しています。
また、実際のハローワークでは、離職票が届いていない場合に、一定期間経過後、離職票がなくても受給資格の確認を進める「仮受付」「仮手続」等の取り扱いをしているところがあります。
例えば、ハローワークによっては、離職日の翌日から12日目以降を目安として仮受付を案内しています。
ただし、この「12日」という取り扱いを全国一律の法律上の期限として考えるのは適切ではありません。実際の受付方法や必要書類、開始時期については、管轄のハローワークに確認してください。
仮受付等を利用できる場合には、例えば、以下のような資料を準備しておくとよいでしょう。
- マイナンバーカード等の本人確認書類
- 退職したことが分かる書類(退職証明書、解雇通知書、退職届等)
- 雇用契約書
- 給与明細
- 会社とのメール・LINE等
9.離職票が届かないことと、離職理由が間違っていることは別問題
特に注意してほしいのがこの点です。「離職票が届かない」という問題と、「離職票は届いたが、離職理由が間違っている」という問題は、別の問題です。
例えば、「会社から離職票が届かない」という場合には、まず会社の離職手続きが行われているかを確認し、必要に応じてハローワークに相談します。
これに対して、「離職票は届いたが、会社が自己都合退職と記載している。しかし実際には解雇だった」という場合には、離職理由についてハローワークに異議を述べ、実際の離職理由を示す証拠を提出することになります。
厚生労働省は、離職理由が実際と異なる場合には、受給手続きの際にハローワークへ申し出るとともに、離職理由を証明する書類があれば提出するよう案内しています。
そのうえで、ハローワークが本人の主張、証拠書類、事業主の主張等を確認し、離職理由を判断します。
10.離職理由が間違っている場合は、どのような証拠が重要?
離職理由について争いがある場合には、証拠が非常に重要です。
解雇なのに自己都合とされている場合:
解雇通知書、解雇理由証明書、会社からのメール、上司とのメッセージ、退職勧奨に関する記録、面談時の録音、同席者の証言などが考えられます。
退職勧奨を受けて退職した場合:
退職勧奨時の録音、メール、面談記録、会社からの書面、上司とのチャットなどが重要です。
賃金低下などを理由として退職した場合:
給与明細、労働条件通知書、雇用契約書、賃金変更通知、会社からのメールなどが証拠となります。
離職理由の判定では、単に「会社が嘘をついている」と主張するだけではなく、第三者から見ても離職理由を裏付けられる資料を整理することが重要です。
11.離職理由によって失業給付に違いが生じることがある
離職理由は、失業給付をいつから受けられるか、どの程度の給付日数となるかなどに影響することがあります。
例えば、解雇、倒産等による離職や、一定の事情による正当な理由のある自己都合離職などは、雇用保険上の「特定受給資格者」や「特定理由離職者」に該当する可能性があります。
そのため、「離職票の離職理由なんて単なる形式だから、間違っていても問題ない」とはいえません。
また、本来は会社都合による離職であるにもかかわらず、離職票に自己都合退職と記載されている場合、受給手続き上不利益が生じる可能性があります。
もっとも、最終的な離職理由の判断は、会社が一方的に決めるものではありません。ハローワークが本人側・会社側双方の主張や資料を確認して判断します。
12.ハローワーク・労働局・労働基準監督署・弁護士のどこに相談する?
離職票に関する問題では、相談先を間違えないことも重要です。相談内容に応じて、以下の相談先へ相談しましょう。
相談先一覧
相談先 | 主な相談内容 |
|---|
ハローワーク | 離職票、雇用保険、失業給付、離職理由 |
|---|
労働局 | 労働問題全般、総合労働相談等 |
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労働基準監督署 | 労働基準法等の違反に関する問題 |
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弁護士 | 会社への請求、交渉、損害賠償請求、解雇・退職問題等 |
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(1) 基本的には、離職票の問題はハローワーク
離職票は雇用保険に関する書類です。したがって、「会社が離職票の手続きをしてくれない」という問題については、まずハローワークに相談するのが基本です。
(2) 労働基準監督署は、離職票問題の第一相談先ではない
労働基準監督署は、労働基準法などに関する問題を扱う行政機関です。そのため、未払い賃金、違法な長時間労働、労働基準法上の解雇予告などの問題が併存している場合には労働基準監督署への相談が問題となりますが、「離職票が届かない」という雇用保険上の手続きについては、まずハローワークに相談するのが適切です。
(3) 弁護士に相談したほうがよいケース
一方、会社が意図的に離職票の手続きを妨害している場合や、実際には解雇なのに自己都合退職として処理されている場合、未払い賃金が発生している場合などは、弁護士への相談を検討する価値があります。特に、離職票の問題の背景に「不当解雇」「退職強要」「未払い賃金」などの労働紛争が存在する場合には、全体的な法律的対応が必要となります。
13.弁護士が会社に離職票を請求することはできる?
会社に何度連絡しても対応しない場合、弁護士から雇用保険の離職手続きの実施や離職票の交付手続き等を求めることが考えられます。
ただし、離職票の交付そのものは雇用保険の行政手続きであるため、ハローワークへの相談・手続きと並行して進めることが重要です。
また、弁護士が介入することで、離職票の問題だけでなく、その背景にある解雇、退職勧奨、未払い賃金などの問題についても一緒に検討できるというメリットがあります。
14.会社が離職票を出さないことで損害が発生したら?
会社が正当な理由なく離職手続きを拒否・放置し、それによって失業給付の受給が遅れて経済的損害を被った場合、法的には会社に対して不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)を行うことができる可能性があります。
実務上は、損害賠償請求の警告(弁護士名義の通知書送付など)を行うことが、会社に速やかな発行手続きを行わせる強力な交渉手段となります。
15.離職票が届いたら、すぐに内容を確認する
離職票が届いた場合、「届いたから安心」と考えず、氏名、離職日、被保険者期間、賃金額、離職理由、離職区分などの記載内容を必ず確認してください。
特に「離職理由」について会社との認識にズレがないか確認し、納得できない場合はハローワークに説明する必要があります。
16.離職票の内容に異議がある場合の対応
離職票の内容が実際と異なる場合には、受給手続きの際にハローワークへその旨を伝えましょう。
実際の離職に至った経緯を説明し、会社の記載と異なる部分を明確にし、それを裏付ける資料を提出することが重要です。ハローワークは、本人の主張、証拠書類、事業主の主張などを確認したうえで離職理由を決定します。
17.弁護士が実務上おすすめする「離職票が届かない場合」の対応手順
- STEP1 会社に離職票の交付を希望することを伝える:メールなど記録に残る方法で明確に伝えます。
- STEP2 会社の手続き状況を確認する:「いつハローワークに提出したのか」などを確認します。
- STEP3 マイナポータルを確認する:マイナポータルに直接送付されていないか確認します。
- STEP4 住居所を管轄するハローワークに相談する:会社が対応しない場合はハローワークに相談します。
- STEP5 仮受付等が可能か確認する:離職票がなくても手続きを進められるか確認します。
- STEP6 離職理由に問題があれば、証拠を提出する:認識が異なる場合はハローワークに伝えます。
18.離職票をめぐるトラブルは、早めの対応が重要
離職票が届かないと、「会社の手続きが終わるまで待つしかない」と考えてしまいがちですが、失業給付は受給手続きを開始する時期が重要になります。そのため、会社の手続きが遅れている場合には、早めに住居所を管轄するハローワークに相談することをおすすめします。
まとめ
離職票が届かない場合のポイントをまとめると、以下のとおりです。
- 会社には雇用保険の資格喪失等の手続きを行う義務がある
- 原則として離職日の翌日から10日以内に会社がハローワークへ手続きを行う
- 離職票そのものは、会社ではなくハローワークが交付する
- 会社に離職票の交付を希望していることを明確に伝える
- 会社が対応しない場合は住居所を管轄するハローワークに相談する
- 離職票がなくても仮受付等が可能な場合がある
- 離職理由が事実と異なる場合は、ハローワークに異議を伝え、証拠を提出する
特に重要なのは、「離職票が届かないから、会社が対応するまで待つ」という状態を長引かせないことです。会社への確認と並行して、早めにハローワークや弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
お悩みの方は、弁護士や退職ステーションなどの給付金申請サポートサービスに相談することをおすすめします。