失業保険(基本手当)を受給する際、「所定給付日数をすべて消化してから再就職した方が得である」と考える方は少なくありません。
しかし、雇用保険制度には、早期に安定した職業に就いた受給者に対して、支給残日数分の一部を一時金として支給する**「再就職手当」**という仕組みが設けられています。
場合によっては、満額受給を待たずに早期就職し、給与と再就職手当の双方を受け取る方が、総収入(手取り額)において有利になるケースが存在します。
本記事では、再就職手当の制度概要、具体的な受給額の試算、および申請において障壁となりやすい「8つの支給要件」について、公的資料に基づき解説します。
再就職手当とは:早期再就職へのインセンティブ制度
再就職手当とは、基本手当の受給資格がある方が、所定給付日数を一定以上残して安定した職業に就いた場合、または事業を開始した場合に支給される手当です。
これは、失業者の早期再就職を促進するためのインセンティブとして機能しています。
支給額は、以下の計算式によって決定されます。
支給額 = 基本手当日額 × 支給残日数 × 給付率(60% または 70%)
※基本手当日額には上限があります(令和7年8月1日改定)。
- 離職時年齢60歳未満:6,570円
- 離職時年齢60歳以上65歳未満:5,310円
早期に再就職し、支給残日数が多く残っているほど、高い給付率が適用される仕組みとなっています。
給付率は「60%」か「70%」か:支給残日数の分岐点
再就職手当の金額を左右する「給付率」は、所定給付日数の残存割合によって2段階に区分されます。
1. 支給残日数が「3分の2」以上の場合:給付率70%
- 例:所定給付日数が90日で、残り60日以上ある状態で就職した場合。
- 基本手当の残り総額の7割が一時金として支給されます。
2. 支給残日数が「3分の1」以上の場合:給付率60%
- 例:所定給付日数が90日で、残り30日以上ある状態で就職した場合。
- 給付率は下がりますが、残り総額の6割が支給されます。
注意:支給残日数が「3分の1」未満の場合
支給残日数が所定給付日数の3分の1を下回った時点で再就職した場合、再就職手当は支給されません。 したがって、受給を検討する場合は、自身の残日数管理が非常に重要となります。
【シミュレーション】早期就職による経済的メリット
早期就職した場合と、満額受給した場合の総収入を比較します。
- 前提条件: 基本手当日額 6,000円、所定給付日数 90日
- 失業保険の満額受給額: 54万円(6,000円×90日)
支給開始30日目で就職した場合(給付率70%適用)
- 受給済みの基本手当: 18万円(30日分)
- 支給残日数: 60日(3分の2以上)
- 再就職手当支給額: 6,000円 × 60日 × 70% = 25万2,000円
【給付金合計額】 基本手当 18万円 + 再就職手当 25.2万円 = 43万2,000円
満額受給時の54万円と比較すると、給付金単体では約10万円減少しますが、就職に伴い「2ヶ月分の給与」が別途発生します。 給与収入を加味すると、早期就職の方がトータルの経済的利益は大きくなる傾向にあります。
申請前に確認すべき「8つの支給要件」
再就職手当を受給するためには、以下の8つの要件をすべて満たす必要があります。一つでも要件を満たさない場合、不支給となります。
- 待機期間(7日間)が経過した後の就職であること
受給資格決定日(求職申込み)から7日間の待期期間中に就職した場合は、支給対象外となります。 - 支給残日数が所定給付日数の「3分の1以上」であること
前述の通り、残日数が不足している場合は支給されません。 - 離職前の事業主(関連事業主を含む)への再就職ではないこと
いわゆる「出戻り」や、資本・人事・取引面で密接な関係にある事業所への就職は認められません。 - 給付制限期間の最初の1ヶ月間は「ハローワーク等の紹介」であること
自己都合退職等により給付制限(2ヶ月間等)がある場合、待期期間満了後1ヶ月以内の就職については、ハローワークまたは厚生労働省が認可した職業紹介事業者の紹介による就職に限られます。 ※知人の紹介や、独自にインターネット応募等で就職した場合は対象外となります。 - 1年を超えて引き続き雇用されることが確実であること
1年未満の有期雇用契約(更新の見込みがないもの)や、短期アルバイトは対象外です。 - 原則として雇用保険の被保険者になっていること
週20時間以上の勤務など、雇用保険の加入要件を満たす働き方である必要があります。 - 過去3年以内に再就職手当等の支給を受けていないこと
過去3年以内に、再就職手当や常用就職支度手当を受給している場合は、再度受給することはできません。 - 受給資格決定前から採用が内定していなかったこと
ハローワークでの求職申込み以前に、既に採用が内定していた事業主に就職した場合は、失業の状態とは認められず、不正受給とみなされる可能性があります。
アルバイトや自営業における適用判断
正社員でなくとも、前述の要件(週20時間以上の勤務、1年以上の雇用見込み等)を満たし、雇用保険に加入する場合は支給対象となります。
「事業を開始した」として申請が可能ですが、事業が安定的かつ継続的に営まれることを客観的に証明する必要があります(開業届の提出、事業所の実態、活動実績の証明など)。 要件は厳格に審査されますが、制度上は受給対象に含まれます。
まとめ
失業保険制度においては、「満額受給」が必ずしも経済的最適解とは限りません。 自身のキャリアプランと照らし合わせ、要件を満たす早期就職が可能であれば、再就職手当を活用することで、空白期間を短縮しつつ収入を確保することができます。
- 自身の支給残日数は十分か(3分の1以上あるか)
- 就職経路は適切か(特に給付制限期間中の場合)
これらの要件を十分に確認の上、適切な受給計画を立てることを推奨いたします。
自身の受給額を確認したい方へ
個別の状況における再就職手当の概算額や、自己都合退職時の就職活動の注意点など、詳細な確認が必要な場合は、退職ステーションの「無料給付金受給診断」をご活用ください。

