退職後の収入が途切れることに不安を抱く方は少なくありません。
ただ、退職後に利用できる給付金制度を正しく理解し、適切に手続きを進めることができれば、その不安はかなり小さくなります。失業手当や傷病手当金など、対象となる給付金はいくつかありますが、受け取るためには定められた条件を満たし、正確に手続きを行う必要があります。
そして、実はその手続きの中で一番ミスが起きやすいのが、病院に行く前後のタイミングです。
「病院に行く前」の段階で、受け取れるはずの給付金を受け取れなくなってしまう方が、実際に一定数いらっしゃいます。申請書類の記入ミスや、手続きの遅れが原因ではありません。病院に行く前、あるいは病院に行った時点で、すでに取り返しのつかない状態になっているケースです。
今回は、そういった方に共通していた「3つの間違い」をよくあるケースを交えて具体的にご紹介します。受診前に確認、整理していただけると、大きなミスを防げる可能性があります。
間違い①「診断書をもらえばOKだと思っていた」
給付金の申請で医師に記載してもらう必要がある書類は、一般的に「診断書」と呼ばれるものではありません。病院で発行してもらえる診断書と、給付金の申請に必要な書類は、別のものです。「病院で書いてもらう書類=診断書」というイメージ自体はごく自然なものですが、給付金の申請においては、その理解が思わぬズレを生んでしまうことがあります。
こんな人が当てはまります
退職が決まり、給付金のことを自分なりに調べ始めた方に多いケースです。ネットで「傷病手当金 病院」と検索して、「まず病院に行って診断書をもらえばいい」と理解した。あるいは以前に別の手続きで診断書を使ったことがあって、「今回も同じ流れだろう」と思っている。そういった方が、この間違いにはまりやすい状況にあります。
具体的な場面(よくあるケース)
病院を予約して、受診して、診察室で医師に「給付金の手続きに使いたいので、診断書をください」と伝えた。医師は特に疑問を持つことなく診断書を発行してくれた。「これで次のステップに進める」と思って帰宅し、いざ手続きを進めようとした段階で初めて「この書類では申請できません」と言われる。
通院した記録はある。医師にも会った。でも必要な書類だけが揃っていない。もう一度病院に連絡して、改めて予約を取って、別の書類を依頼する——そこまでの時間と手間がかかった上に、申請のタイミングそのものがずれてしまうケースも実際にあります。退職前にしっかりと確認した上で動くことが、こうした状況を防ぐことにつながります。
間違い②「病院はどこでもいいと思っていた」
給付金の申請においては、受診する病院の診療科が重要になります。給付金の申請に必要な書類を書いてもらえる診療科とそうでない診療科があり、どこに行くかによって、その後の手続きが大きく変わってきます。「病院に行けばいい」ということは分かっていても、「どの科に行くべきか」まで事前に把握できている方は少ないのが現状です。
こんな人が当てはまります
体に不調を感じていて、「近所の内科でいいか」「今通っている整形外科でいいか」と、受診先をすでに決めかけている方がいらっしゃいます。腰が痛い、肩がこる、体がだるい——そういった症状があって、身近な病院をすでに頭の中で選んでいる状態です。給付金のための受診という意識はあっても、診療科の選び方まで考えが及んでいないことが多くあります。
具体的な場面(よくあるケース)
体の不調で整形外科にかかっていた方が「ここで給付金の書類を書いてもらえばいい」と思って相談したところ、「うちでは対応していません」と言われてしまった。あらためて別の診療科を探すことになり、予約を取り直して、また一から受診する——その時間と手間がかかった上に、受診のタイミングがずれてしまうケースも実際にあります。給付金の申請においては、精神科または心療内科での受診が必要になるケースがほとんどです。眠れない、食欲がない、会社のことを考えると気持ちが沈む、朝起き上がれない——そういった状態が続いているのであれば、まずその状態を医師にきちんと診てもらうことが、退職前に動いておくべき最初のステップになります。
間違い③「適応障害でも大丈夫だと思っていた」
内容
給付金の申請において、診断名は受給できるかどうかだけでなく、受給できる期間にも影響することがあります。「適応障害でも給付金はもらえる」という情報はネット上にも多く出ていますが、それは本当のことです。ただ、申請する給付金の種類や個人の状況によって、診断名が受給期間に大きく影響するケースがあることは、あまり知られていません。
こんな人が当てはまります
2つのパターンがあります。一つ目は、以前に心療内科で適応障害と診断されたことがある方です。「前回と同じ診断名になるから今回も大丈夫」と思い込んでいる状態で、改めて自分の状況を整理せずに動こうとしているケースです。二つ目は、ネットで症状を調べて「自分はおそらく適応障害だろう」と自己判断している方です。その前提のまま受診しようとしているため、実際に医師に症状を正確に伝えられないまま診察が終わってしまうことがあります。
具体的な場面(よくあるケース)
以前に適応障害と診断されたことがある方が「今回も同じ診断をもらえばいい」と思って受診した。診察室では「前回も適応障害と言われたので」と伝えて、同じ診断名で書類を書いてもらった。しかし申請を進めてみると、受給できる期間が想定よりも短くなってしまったことが後から判明した。
今の自分の状態を正直に・丁寧に医師に伝えることで、状況に合った診断が得られる可能性があります。過去の診断名やネットの情報をそのまま持ち込むのではなく、現在の症状をしっかり伝えた上で診察を受けることが、退職前に確認しておくべき大切なステップです。
失敗しやすい人の共通点
3つの間違いに共通しているのは、「ネットで調べて、なんとなく分かった気になった状態で動いてしまった」ということです。
インターネット上には給付金に関する情報が多く出ています。ただ、それらの多くは一般的な内容であり、申請する給付金の種類・受診する診療科・個人の状況によって、必要な対応は大きく変わります。「自分のケースでは大丈夫だろう」という判断が、後から取り返しのつかない状況につながることがあるのです。
特に注意が必要なのは、「一度動いてしまってから気づく」パターンです。病院に行った後、書類を受け取った後、そのタイミングで初めて間違いに気づいても、修正が難しいケースが実際に多くあります。給付金の申請においては、最初の一歩をどう踏み出すかが、その後の結果を大きく左右します。
失敗を防ぐためにやっておきたいこと
では、こうした失敗を防ぐためにはどうすればいいか。受診前に整理しておきたいのは、次の3点です。
まず、どの病院・どの診療科に行くべきかを確認しておくことです。症状や状況によって受診すべき科は異なります。「なんとなく近くの病院」ではなく、申請に必要な書類を書いてもらえる診療科かどうかを事前に確認しておくことが大切です。
次に、申請に必要な書類が何かを事前に把握しておくことです。「診断書をもらえばいい」という理解のまま動いてしまうと、病院に行ったにもかかわらず必要な書類が揃わないという状況が起きます。受診前に何を持ち帰る必要があるかを明確にしておくことで、こうした失敗は防げます。
そして、自分の状況でどの給付金が対象になるかを確認しておくことです。給付金の種類によって申請条件や必要書類は異なります。自分がどの給付金の対象になるのかを把握した上で受診することが、スムーズな申請につながります。
この3点は個人の状況によって異なるため、一般的なネット情報だけで正確に判断するのが難しい部分でもあります。「自分の場合はどうなのか」を事前に整理しておくことで、ほとんどの失敗は防ぐことができます。
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