退職給付金額ガイド|失業保険・傷病手当金はいくらもらえるか徹底解説

退職後にもらえるお金の多くは、雇用保険や健康保険に加入していた期間と収入によって金額が決まります。
自己都合での退職・会社都合での退職といった退職理由は支給開始時期に影響しますが、支給額そのものは「直近の収入」と「勤続年数」が基準となっています。

本記事では、退職後に受け取れる代表的な2つの制度――失業保険(雇用保険の基本手当)と傷病手当金(健康保険)について、それぞれの「計算方法」「支給期間」「受給金額の目安」を詳しく解説する。

退職後にもらえる主な給付金の種類

制度管轄目的
失業保険(雇用保険の基本手当)厚生労働省(ハローワーク)失業中の生活支援
傷病手当金健康保険(協会けんぽ・組合等)病気・ケガで働けない期間の生活補助
再就職手当厚生労働省(ハローワーク)早期就職を支援する一時金
退職金・企業年金企業・共済勤続年数に応じた退職時支給金

退職後に利用できる主な公的給付金は、上記の4つですが、本記事では、最も多くの人が利用する「失業保険」と「傷病手当金」に焦点を当てて解説します。

給付金制度比較・併用ガイド|失業保険・傷病手当金・退職金を徹底比較

失業保険の給付金額の仕組み

基本の考え方

失業保険の金額は、「離職前6カ月の賃金平均額」を基準に算出されます。
1日あたりの支給額(基本手当日額)は、以下の計算式で求めることができます。

基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率(50〜80%)

給付率は低所得者ほど高くなる設計で、賃金が低いほど実質的な補填率が上がります。

賃金日額の計算方法

賃金日額 = 離職前6ヵ月間の賃金総額 ÷ 180日

ここでの「賃金」には、基本給・残業代・通勤手当などを含みます。(但し、ボーナスは含みません。)

支給期間(所定給付日数)

自己都合退職の場合

雇用保険の加入期間(被保険者期間)支給期間(所定給付日数)
10年未満90日
10年以上20年未満120日
20年以上150日

会社都合退職の場合

雇用保険の加入期間(被保険者期間)
1年未満1年以上5年未満5年以上10年未満10年以上20年未満20年以上



30歳未満90日90日120日180日
30歳以上35歳未満120日180日210日240日
35歳以上45歳未満150日240日270日
45以上60歳未満180日240日270日330日
60歳以上65歳未満150日180日210日240日

年齢別の上限・下限額(令和7年度)

基本手当日額には上限額と下限額が設定されており、この金額は「毎月勤労統計」の平均定期給与額の増減により、毎年増減しています。
令和7年度8月1日以降の金額は以下の通りです。

年齢区分上限額(1日)下限額(1日)
29歳以下7,225円2,411円
30〜44歳8,055円
45〜59歳8,870円
60〜64歳7,623円

参考:厚生労働省「雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆様へ」

支給総額の目安

支給総額は以下で計算することができます。

支給総額 = 基本手当日額 × 支給日数

例:
月収25万円、45歳、会社都合退職の場合
→ 賃金日額 約8,300円 × 給付率60% × 支給日数240日
約120万円前後

注意点

  • 待期期間(7日)+給付制限(自己都合なら1カ月間)があります。
  • 離職票の「会社都合・自己都合」区分によって給付の開始時期が異なります。
  • 給付制限中に就職すると、失業保険および再就職手当の対象外となってしまいます。

傷病手当金の給付金額の仕組み

病気やケガで働けない期間に支給される傷病手当金は、失業保険のようにハローワークから支給されるのではなく、健康保険から支給されます。
退職後も一定条件を満たすと、継続して受給することが可能です(健康保険法第104条)。

1日あたりの支給額は、以下の計算式で求めることができます。

傷病手当金(1日) = 標準報酬日額 × 2/3

標準報酬日額は、毎月の報酬額によって決まりますが、アルバイト等で週給等で決まっている場合はその金額を月額に換算した額となります。
例:標準報酬月額30万円 → 30万円 ÷ 30 = 1万円/日
→ 給付額:1万円 × 2/3 = 約6,667円/日

支給期間

通算 1年6カ月(540日)受給することができます(受給期間中に給与の発生する勤務が発生しても、同じ傷病で合計1年6ヵ月間受給可能)。

支給総額の目安

傷病手当金(総額) = 標準報酬日額 × 2/3 × 支給日数

例:標準報酬月額30万円 → 日額1万円 × 2/3 × 540日
約360万円

注意点

  • 傷病手当金と失業保険は同時に受給できません(それぞれ就労不能である状態と就労可能である状態で受給する給付金であるため)。
  • 「労務不能」を証明する医師の診断書が必要です。
  • 病気退職の場合は、まず傷病手当金の申請を行い、回復後に失業保険の順に申請します。

退職理由別の支給期間と金額比較

退職理由対象となる給付金支給期間1日あたりの給付額総支給額目安
自己都合退職失業保険(雇用保険の基本手当)90日~150日約4,000〜7,000円約40〜80万円
会社都合退職90日間~330日約4,000〜8,000円約40〜130万円
病気退職傷病手当金~540日(傷病の回復まで)~8,000円約300〜400万円

※上記は標準報酬月額20〜30万円の想定。

失業保険と傷病手当金の違い

比較項目失業保険(雇用保険の基本手当)傷病手当金
管轄機関ハローワーク(厚生労働省)2,411円
対象者休職中の失業者(働ける人)就労不能な方(療養中のため働けない人)
給付額の基準賃金日額の50〜80%標準報酬日額の2/3
支給期間90〜330日最長540日
同時受給不可不可

この2つの制度はどちらも生活支援目的だが、対象条件が真逆のため同時受給はできない
体調不良中は傷病手当金を、回復後に失業保険を申請するのが正しい順序。

再就職手当で実質的な給付額を増やすことが可能

失業保険受給中に早期再就職した場合、再就職手当が支給される。
支給残日数に応じて以下の割合が支払われる。

  • 残日数が3分の2以上 → 基本手当日額の70%
  • 残日数が3分の1以上 → 基本手当日額の60%

例(失業保険の残日数が3分の2以上残っていた場合の再就職の支給金額):
残日数100日 × 基本手当日額7,000円 × 70% = 49万円支給

給付金額を最大化するための3つのポイント

  1. 離職票の理由を必ず確認
    会社都合扱いであれば給付開始が早まり、総支給額が増えます。
  2. 病気退職ならまず傷病手当金を受給する
    支給期間が長く、金額も安定します。
  3. 早期再就職で再就職手当を狙う
    失業保険を受給する際に支給残日数が多いほど、再就職手当の金額も増えます。

まとめ|制度を正しく理解すれば給付は最大化できる

  • 給付金額は「直近6カ月の収入」と「勤続年数」で決まります。
  • 体調不良なら傷病手当金、会社都合なら失業保険の方が有利です。
  • 制度の併用・切り替えを正しく行えば、最大400万円以上の給付を受けられる場合もあるります。

LINEで簡単!
退職給付金診断