退職は労働者の権利であり、本来会社の許可は不要なものです。
しかし伝え方を誤ってしまうと、引継ぎトラブルや人間関係の悪化を招く恐れがあります。
円満退職の基本は、法的ルールを理解し、誠実に段取りを踏むことです。
本記事では、実務上の流れとトラブル防止の要点をわかりやすく解説します。
退職を決めたらまず確認すべき3つのこと
① 就業規則の「退職条項」
多くの会社では「退職は1カ月前までに申し出ること」と定めています。
ただし、法律上は退職の申し出から2週間後に契約終了が可能です。(民法第627条)。
現実的なラインとして、就業規則を尊重し、”1カ月前”を目安に伝えるのが無難です。
② 契約形態
- 正社員:民法第627条(退職の申し出から2週間後)または就業規則が適用
- 契約社員:契約期間の満了またはやむを得ない理由が必要
- 派遣社員:派遣元との契約内容を確認
③ 退職時期
基本的に決められた時期はありませんが、一般的に多いのは以下の通りです。
- 賞与支給後(6月、12月)※会社によって時期が異なります。
- 繁忙期を避ける(年度末・決算期は避ける)
- 引継ぎがしやすい時期を選ぶ
- 上長相談するのがベストです。
退職を伝えるベストタイミングと順番
- 退職希望日の1カ月~2ヵ月前を目安に上司へ相談。
- 特に契約社員・派遣社員は2カ月前が望ましい。
- 直属の上司(会社の規定による)に口頭で相談
- 直属の上司の承認後、人事部へ報告
- 上司の指示に従って、必要に応じて社内外へ共有
- メールやLINEだけで伝える
- 同僚に先に話す
- 感情的な理由(不満・怒り)を前面に出す
退職時の対応は、今後の社会人生活において、どこに影響するかわかりません。
問題なくスムーズに退職するためにも、正しい順序で退職を伝えるようにしましょう。
退職理由の伝え方と例文
退職理由は「正直すぎず、嘘でもない」範囲で構成するのが、円満退職のコツです。
感情を排し、前向きな理由に変換して伝えるようにしましょう。
| 状況 | 伝え方の例 |
|---|---|
| キャリアアップ | 「新しい分野に挑戦したいと考えています。」 |
| 体調・家庭の事情 | 「体調面を考慮し、環境を整えたいと思っています。」 |
| 職場環境が合わない | 「自分の力をより発揮できる環境を探したいと考えています。」 |
| 会社方針の違い | 「今後の方向性の違いを踏まえて決断しました。」 |
※ 会社への不満や個人攻撃は絶対にNGです。目的は「理解されること」ではなく「穏やかに退職すること」であることを意識しましょう。
退職届・退職願の書き方と提出方法
| 書類 | 意味 | 法的効力 |
|---|---|---|
| 退職願 | 退職を“願い出る”書類 | 承認後に効力発生 |
| 退職届 | 退職を“通知する”書類 | 承認不要・撤回不可 |
退職届
令和〇年〇月〇日
株式会社〇〇
代表取締役 〇〇殿このたび、一身上の都合により、勝手ながら
令和〇年〇月〇日をもって退職いたします。住所:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目
氏名:〇〇〇〇 印
- 封筒に入れ、直属の上司へ手渡しする
- メール送付やFAX提出は避ける
なお、退職届の受理を拒否されても、法的には2週間経過で契約終了となります(民法第627条)。
有給休暇の消化と引継ぎ計画の立て方
退職時でも有給休暇は労働者の権利(労働基準法第39条)として行使できます。
会社は「時季変更権」を行使できますが、退職予定者には実質的には適用できません。
→ よって退職時の有給消化は認められるのが原則です。
| 時期 | 行動 |
|---|---|
| 退職1カ月前 | 退職申告・引継ぎリスト作成 |
| 退職2〜3週間前 | 後任指導・資料整理 |
| 退職1週間前 | 有給申請・業務引継ぎ最終確認 |
- 引継ぎ拒否はマナー違反。
- 有給の使用・残日数はメールなどで記録を残しておく。
トラブルを防ぐための法的知識
- 退職届を受け取ってもらえない場合
→ 内容証明郵便で送付すれば法的に有効になります。 - 離職票・源泉徴収票が届かない場合
→ 本来、会社から郵送されるものですが、受け取れない場合はハローワーク・税務署に相談が可能です。 - 退職金や残業代が支払われない場合
→ 労働基準監督署に申告(労基法第24条違反)。 - 損害賠償請求を受けた場合
→ 原則、法的拘束力なし(民法第628条の例外を除く)。
退職後に必要な書類と手続き
| 手続き内容 | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 雇用保険(失業保険申請) | ハローワーク | 退職翌日〜1年以内 |
| 国民健康保険加入 | 市区町村役場 | 退職日から14日以内 |
| 国民年金加入 | 市区町村役場 | 同上 |
| 離職票・源泉徴収票の受取 | 旧勤務先 | 退職後1〜2週間以内 |
まとめ|誠実に伝え、計画的に辞めることが円満退職の基本
- 退職の権利は法的に保証されている(民法第627条)。
- 実務上は1カ月前に上司へ相談するのが理想。
- 理由は前向きに、引継ぎと書類提出を丁寧に。
- 最後まで誠実に対応すれば、トラブルも少なく再就職にも好影響。

